広報誌「TRUTH」2025年度秋号
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08 正しい平和教育の在り方とは。地域ごとの被害を知り、「自分ごと」にす。幼い頃から平和教育を受けて育ちましたが、近藤さんのお話を聞いて、平和教育と原爆の実相を知ることは必ずしもイコールではないと気づかされました。私たち広島に縁のある人間にとって原爆のことを知り、伝えていくことは大きな使命ですが、平和とは核兵器の問題を超えた広い概念です。全国、全世界で自分たちの生きる地域でどんな被害があったのかを知る平和学習の機会があることによって、自分ごととして平和を考えるきっかけが生まれるように思います。広島の平和教育は原爆に特化してきたからこそ、地元で育った若い世代が「他の視点はないのか」と疑問を持つ。そこから新たな研究が生まれるのは意義深いですね。広島には平和に関心を持つ研究者が県外や海外からも集まってきます。本学も広島にある大学として、そうした人々をしっかり支えていきたいと思います。ところで佐渡先生は、どうして平和学の研究を志されたのですか?私は本学の法学部国際政治学科の卒業生で、ちょうど冷戦が終わった直後の時代に大学生活を送りました。当時から「どうすれば戦争がなくなるのか」に興味があり、研究の道に進みました。他の研究者からは、「広島出身だから平和に関心を持っているのですね」とよく言われます。確かに、広島で育ったことが自然とそのテーマについて考える土壌になっていたのだと思います。だからこそ河内さんや近藤さんのように、学生のうちから平和に関心を持って活動や研究に取り組む姿を目の当たりにすると、平和への思いが引き継がれているようで本当にうれしく感じます。近藤さんは平和教育をテーマに卒業研究をされているそうですね。具体的にどのような内容なのでしょうか?私は「平和教育の地域差」について研究しています。広島出身ということもあり、もともと平和教育に関心がありました。高校時代に県外の友人ができたのですが、「8月6日が何の日か分からない」「興味がない」といった反応の人が多く、驚きました。調べていくうちに、広島ほど平和教育が重視されていない県もあることが分かりました。また、平和教育というと広島・長崎の原爆や沖縄の地上戦などの話が中心になりがちですが、他の地域でも空襲などの被害があったはずです。しかし、そのような出来事があまり取り上げられていない現状に疑問を持ち、平和教育の在り方について考えようと思い、このテーマを選びました。「全国で広島のことを学ぶべき」というのではなく、自分が住んでいる地域の戦災について学ぶことも立派な平和教育ではないか、そんな問いから出発しているのですね。ただ、何を学ぶべきかは人によって意見が異なりますよね。おっしゃる通りです。インタビューを通じて情報を集めているのですが、平和教育についてしっかり意見を持っている人もいれば、関心が薄くて話が進まないこともあります。難しいけれど、非常に興味深いテーマだと感じます。私自身、広島生まれ広島育ちで、被爆二世でもありま佐渡矢野佐渡佐渡近藤佐渡近藤矢野

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