広報誌「TRUTH」2024年度春夏号
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地域(面)の価値・魅力の創造へまちづくり 観光まちづくりでは、「訪れる人にとっても住んでいる人にとっても良いまちである」ことが大切です。オーバーツーリズム*になってしまっては、住民の生活は破壊されてしまいます。新サッカースタジアムを望んでいたのは一部の広島県民やサンフレッチェサポーターですが、近隣住民は騒音などへの懸念から現在地への建設に反対していました。住民の立場に立てば、その懸念もよくわかります。そこを、どう折り合いをつけていくかが大切です。 私の専門である地理学では、「立地」の良し悪しを常に考えます。サンフレッチェが当初希望していた旧広島市民球場跡地は、原爆ドームの世界遺産登録が抹消さ 私は主に紙屋町・八丁堀地区を対象に「エリアマネジメント」という手法について実践的に研究しています。 都心部全体を俯瞰した時に、まちなかスタジアムは都心部の回遊性を高めることにつながるため、とても重要な開発でした。現在、複数の再開発が進む都心部では今後も質の高い目的地・居場所・新たな活動(点)が創出され、日常の行動選択肢が増える予定です。さらに、試合日には、都心部や横川からスタジアムに向けて人の流れ(線)ができます。野球に比べて試合数が少ないと言われますが、受け皿を作るために投資が必要な郊外地域ではなく都心部の立地なので、さまざまな効果*観光地にキャパシティ以上の観光客が押し寄せることれる懸念だけでなく、立地面からもベストとは言えません。広島電鉄の電停と広島バスセンターからは近いですが、そこに観客が殺到してしまうと深刻な交通問題を引き起こします。現在地であれば駅、電停、バスセンターから徒歩でアクセス可能なため、観客が分散し、交通問題をそれほど心配する必要はありません。しかも、市内繁華街へも徒歩で行けるため、市街地活性化にもつながります。 新スタジアムにあるキャプテン翼の壁画には感動しました。サッカーを通して平和の大切さを世界に発信するためにも、ぜひ、新スタジアムでより多くの国際試合を開催してほしいものです。が期待でき即効性は高いと思います。 これからの広島都心部には点と線をつなぎ、地域(面)の日常的・恒常的な価値や魅力につなげる変化が必要です。最短最速の動線整備や単発の経済効果につなぐだけではなく、試合後の余韻に浸れるような移動・空間・体験などの都市環境デザイン、活動と活動をつなぐさまざまな形の場づくりや地域コミュニケーションデザインが必要であると考えます。この変化を市民・民間主導で実現させる手法の一つがエリアマネジメントです。真の意味での「みんなで作るサッカースタジアム」になることを期待しています。商学部06かわせまさき川瀬正樹教授きはらいちろう木原一郎准教授国際コミュニティ学部新サッカースタジアム「エディオンピースウイング広島」が広島市内中心部に移転した観光まちづくりで大切なこと観光新サッカースタジアムから

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